Seed of Future
SORA-KOI Project
空恋プロジェクト
2012年8月からスタートした
「空恋プロジェクト」は、
「空の旅を通じて、
九州・沖縄の様々な街と出会い、
恋をしていただきたい」
との想いから誕生したプロジェクト。
今回は、その立ち上げから
携わる担当者に、
誕生のきっかけや取り組み、
今後の展望について
熱く語ってもらった。
#1
現場の理解を得るのに
苦労したスタート
── この「空恋プロジェクト」がスタートしたきっかけを教えてください。
ソラシドエアは2002年8月に就航しました。「空恋プロジェクト」は就航10周年を記念して企画として2012年8月にスタートしたもので、「より地域に根ざしたエアラインとして成長していくにはどうすればよいのか」と社内で議論が活発に行われていく中で生まれた企画です。
── 具体的に、空恋プロジェクトではどのようなことを実施しているのですか?
まず、対象は基本的に九州・沖縄の各自治体になります。ソラシドエアの運航する“1機体に1自治体”を基本として、機体側面にその自治体の地名などを約1年間表示。機内では自治体が作成する観光パンフレットを搭載したり、客室乗務員がドリンクサービス時身に着けるエプロンを特別仕様にしたり、各自治体が独自に考えたPRを行わせていただいています。さらに、各就航地空港やその地域や首都圏でのイベントも相互に協力し、行っています。
── このプロジェクトに関わり始めた時、何か思ったことはありましたか?
「九州・沖縄の翼」を掲げる、ソラシドエアらしい取り組みだと思いました。それから、「空恋プロジェクトをやりたい」とおっしゃってくださる自治体の首長様や担当者の皆様、ユニークで、パワーがある方々ばかり。このような方々とコミュニケーションを重ね、一つのプロジェクトを形にしていくことはすごく楽しいですね。それに、このようなことの積み重ねがソラシドエアの認知度を高め、ご利用いただく機会を増やすことにつながっていくのだと思い、モチベーションも自然と高まりましたね。
── 一緒に取り組む自治体はどのように決まるのですか?
おかげさまで、プロジェクトの1機目から大きくニュースなどで取り上げていただき、その様子をご覧いただいたり、実際に空恋プロジェクト仕様の機体にご搭乗いただいた首長様やご担当者様から直接、お問い合わせをいただいて、プロジェクトが進んでいくケースがほとんどです。このほか、当社には九州の各就航地を担当するスタッフがおり、「この地域の魅力を発信したら面白いのではないか?」という情報を得て、こちらから自治体へご提案させていただくケースもあります。
── ちなみに、プロジェクトが始まった当初、苦労されたことはなんですか?
やはり、最初は社内関係部署の理解を得るのに苦労しましたね。特に、整備の現場では通常の整備業務に加えて、それまでには依頼したことがないような特殊な作業をお願いしました。というのも、「機体に地名を表示する」と一言で片付けていますが、そのステッカー(デカール)はとても大きく、簡単に貼れるものではありません。また、機体に貼り付け、約1年間飛び続けますので、安全性はもちろん、ステッカーの耐久性等にも十分配慮する必要があります。さらに、通常の運航が終了した夜間に作業を行うので、その段取り等、様々な調整を社内外で行う必要がありました。それでも何とか現場の理解と協力を得て、現在飛んでいる機体は20機目となりました。今ではプロジェクトが社内に浸透し、このプロジェクトが持つ意義や、自治体の皆様方のご期待を社員が理解し、重要な取り組みのひとつとして定着しています。このプロジェクトに惹かれて入社してきた社員もいて、自分たちの会社のアイデンティティの一つになってきたのだと思います。
#2
それぞれの地域にある魅力を
体験すること
── 現在20機目ということですが、とくに印象に残っている取り組みはありますか?
宮崎県に西米良村という県内で一番小さい村があるのですが、その西米良村の方々との取り組みは印象深かったですね。西米良村は「平成の桃源郷」とも呼ばれる素敵な場所。もともとPRに力を入れている自治体でしたが、空恋でも一緒にユニークなPRを行いました。たとえば、機内で配る自治体の広報誌は一般的にA4サイズのものが多いのですが、西米良村様の広報誌は新聞の形をしたものや、広げると村の地図になっているもの、さらに、地元の写真家が撮影した村の写真が載っているポストカードなど、村の魅力が存分に伝わってくるものばかり。実際、「これらの広報誌を見て、西米良村に遊びに来たお客様がいらっしゃいました」という話を後日伺った時はうれしかったことを覚えており、「これぞ、空恋!」と思いました。
── 面白いですね。他に、印象に残っている取り組みはありますか?
はい。今まさに18機目のプロジェクトとして進行している大分県杵築市様との取り組みも面白いですよ。この街はひな祭りが有名で、街自体も小京都のような風情があり、観光客は着物を着て街を散策できることが魅力です。そこで、その魅力を機内でも再現しようと、機内で客室乗務員が着物を着て杵築市産の紅茶やお菓子をお出しできないだろうかと検討しているところです。(3月3日に空の上でひな祭りを祝う『ひいなフライト』として実施予定)
── 空恋プロジェクトの企画はみなさんも一緒に考えるのですか?
いろいろなケースがありますね。「こういう観光素材がある」とか「こういうことをPRしたい」というのは事前に教えてもらっていることが多いですが、私たち自身が体験してなければ、自分たちの言葉でPRすることはできません。従って、空恋プロジェクトを行う自治体には必ずお伺いし、その魅力を自分の五感で感じるようにしています。以前、鹿児島県のさつま町を訪れた際は、1年中タケノコが採れることにもびっくりしましたが、舟から蛍を見ることができる「ホタル舟」というツアーを体験させていただき、ものすごく感動しました。そうすると、「この感動をもっと多くの人に伝えたい」という思いが自然と湧いてきます。そして、この思いが、空恋プロジェクトに携わる私の大きな原動力になっているのです。九州・沖縄には本当に魅力ある市町村がたくさんあり、九州に拠点を構える私たちも知らない場所がまだまだ沢山あります。当然、県外の人たちはもっと知らない。だからこそ、私たちを媒介にして、九州・沖縄の魅力を発信していきたいと思っています。
── 「航空会社が、媒介になる」という考え方は面白いですね。
そうですね。私たちは九州・沖縄を知ってもらうための媒介になることができ、九州・沖縄の各市町村が連携するための媒介にもなれると考えています。2017年、ソラシドエアは就航15周年を迎え、その記念イベントとして、これまで空恋プロジェクトでご一緒させていただいた自治体様に東京にお集まりいただき、「ソラシドマルシェ」という取り組みに挑戦しました。同じ九州とはいえ、自治体同士がその境を超えて一緒にPRを行う機会はそう多くないため、イベント自体も盛り上がりましたが、ご参加いただいた担当者様同士が活発に情報や意見を交わすなど、とても有意義な機会にすることができました。
#3
新たに見えてきた課題と、
今後の空恋
── 現在、空恋プロジェクトの課題として捉えていることは何かありますか?
やはり、自治体のみなさまがやりたいことや当社に期待することに対して、私たちの運航や安全上の制約等があり、期待に応えきれないことは課題と認識しています。たとえば、機内販売。自治体が販売したい商品があったとしても、運航上の制約の中で扱えないものがあったり、また扱えるものであっても多くのお客様のお買い上げを期待できるものなのかまでを考慮して判断する必要があります。自治体ごとに機内の仕様を変えるといったアイデアも挙がりますが、安全性はもちろん、ソラシドエアは多種多様なお客様にとっての“交通インフラ”であるということを考えた時、現在の状況下での実現は厳しいという判断を下さざるを得ないと考えています。このような部分は、今後、もっと社内でも議論する必要がありますね。
── では、最後に。空恋プロジェクトの今後の展望をお聞かせください。
空恋プロジェクトは、私たちにとっては使命に近いもののように感じています。他の航空会社でも同じような取り組みはできると思いますが、九州・沖縄の各自治体との物理的、心理的な距離の近さでは大きなアドバンテージがあると思っています。九州・沖縄の自治体のみなさまが悩んでいることがあったら、とりあえずソラシドエアに相談しようと思っていただける存在になりたいです。そのためには、九州・沖縄の翼として地域と同じ目線で課題を共有することが重要です。一緒に地域を盛り上げ、共通のゴールを目指したいですね。プロジェクトに一緒に取り組んだ自治体様を九州・沖縄の地図上に塗っていき、地図をソラシドエアカラーのピスタチオグリーンに染めたいです。そして、日本国内はもとより、世界中の人々に九州・沖縄の魅力を伝え、足を運ぶきっかけになれたらうれしいですね。
── 本当に九州・沖縄が好きなんですね。
大好きです! ソラシドエアには九州出身の社員も多いですし、九州と縁のなかった社員も「九州・沖縄の魅力を伝えたい」という思いを持っています。それが私たちの一番の強みですし、今後もこうした思いに共感できる人たちと一緒に働きたいですね。ぜひ、一緒に空恋プロジェクトをもっと盛り上げましょう。